大判例

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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)5898号 判決

原告 株式会社日誠商会

被告 三有石油株式会社

第一、当事者<省略>

第二、主文

1、原、被告間の当庁昭和四〇年(手ワ)第一、二九七号約束手形金請求事件につき当裁判所が同年六月三〇日言渡をした手形判決の主文第一項はそのうち、被告に対し、金一五万円およびこれに対する昭和三九年一二月九日以降完済まで年六分の割合による金員の支払を命ずる限度において認可し、その余の部分を取り消す。

2、原告の請求中右取消にかかる部分を棄却する。

3、右手形判決の主文第二項(訴訟費用に関する部分)を取り消す。

4、訴訟費用は、これを五分し、その三を被告、その余を原告の各負担とする。

第三、事実

一、当事者の求める裁判

(一) 原告(請求の趣旨)

被告は原告に対し、二五万円およびこれに対する昭和三九年一二月九日以降右完済まで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決ならびに仮執行宣言(手形判決の主文と同旨)。

(二) 被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、主張

(一) 原告

(請求原因)

原告は被告が振り出した後記約束手形の取立を訴外八千代信用金庫に委任し、同金庫をしてこれを満期に支払場所に呈示させたが、支払を得られなかつたので、再び同金庫よりその返戻を受けて現に所持する。

よつて原告は被告に対し、右約束手形金およびこれに対する右呈示の日の翌日以降完済まで商事法定利率たる年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

手形目録

金額 二五万円

満期 昭和三九年一二月八日

支払地、振出地とも 東京都大田区

支払場所 株式会社東京相互銀行大森支店

振出日 昭和三九年八月三一日

振出人 三有石油株式会社

受取人兼第一裏書人 八洲精工株式会社

右被裏書人 株式会社日誠商会

(抗弁事実の認否)

否認する。

(二) 被告

(答弁)

原告主張の請求原因事実は認める。

(抗弁)

被告は本件手形を訴外八洲精工株式会社に金融を得させる目的で振り出し、同会社は訴外三井敬三に対して本件手形による金策を依頼し、裏書をしてこれを同人に交付した。同人は原告に対して本件手形の割引を依頼したが、拒絶されたので、自ら金額一五万円の約束手形を振り出し、これを担保に原告から一五万円の貸付をうけて八洲精工株式会社に交付した。その際、三井は本件手形も右債務の担保として原告に交付したのである。

従つて原告は本件手形上の権利を実質上右一五万円の限度においてのみ有するに過ぎない。

三、証拠<省略>

第四、理由

一、原告主張の請求原因事実は当事者間に争いがない。

二、そこで被告主張の抗弁について考えてみるのに、

(一) 証人三井敬三の証言によれば、抗弁事実を認めることができ、反対の証拠はない。

(二) ところで被告と訴外八洲精工株式会社との間におけるように、当該手形が受取人に金融を得させる目的で振り出されたいわゆる融通手形であつて実質関係が存在しないということは単なる人的抗弁に止まり、その後受取人から右手形を裏書により取得した第三者に対しては当然に対抗し得るものではなく、いわんや同人が、手形割引もしくは手形貸付の方法で裏書人に対し現実に金融を与えている場合には、手形振出の本来の目的を達したのであるから、第三取得者の善意、悪意を問うまでもなく、振出人としてはもはや融通手形であることを主張して手形金の支払を拒み得ないものといわねばならない。しかしながら、

他面右の第三者が何らの実質関係もなく手形を取得した場合には同人は右手形につき固有の経済的利益を有しないのであるから、同人が手形の取得に当り、その融通手形であることにつき悪意の場合は無論のこと、よしんば善意であつたとしても同人に対しては人的抗弁切断による利益の保護を考慮する必要はなく、振出人は受取人に対する前記人的抗弁を対抗し得るものと解してよい。しかして右の第三者が融通手形たることを知らずしてこれを他の少額の債務の担保のために取得した場合には当該手形の被担保債権額を超える部分についてのみ固有の経済的利益を有しないものというべきであるから、この部分に限つて前記人的抗弁の対抗を許すのが相当である。

(三) 本件の場合原告は訴外三井敬三に対する貸金一五万円の担保として本件手形を取得したものであるから、右超過部分に関する限り、被告は前記のように、本件手形がもともと融通手形であり実質関係が存在しないという人的抗弁を原告にも対抗して、その支払を拒み得るものというべきである。

(四) 以上の次第で被告の抗弁は理由があり、原告の本訴請求は金一五万円およびこれに対する手形呈示の翌日以降完済まで商事法定利率の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で相当であるがその余は失当として棄却すべきであるから、当裁判所がさきに言渡をした手形判決は右と符合する範囲で認可し、その余を取り消すこととし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 佐藤安弘)

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